失敗する原因とその対策

特許出願・登録には相当の費用がかかります(特許出願:約30万円、審査請求:約20万円)。相当の費用をかけ、せっかく取得した特許権を確実なものとするためには、その原因と対策法を十分に知る必要があります。事前に特許申請をとりまく状況やリスクを理解することで、特許にならないような出願を避けることができると言えるでしょう。

失敗する原因

先行技術調査を十分にしていない

特許にならないような出願がどの程度なされているのか、ご存知でしょうか?
特許査定率(特許庁の審査段階において得られた処分結果のうち、特許となる決定がなされた割合)は約50%(2005年:49.1%)です。審査未請求のものについてはこれに含まれないため、出願して特許登録される割合はさらに低くなります。
また、特許査定されたものが、無効審判で特許が取り消される割合は50%以上(2009年:無効審判件数257件、この中で請求不成立160件)。すなわち、特許出願されたもののうち、特許登録される割合は極めて少ないので、先行技術調査は極めて重要、ということになります。
先行技術調査を十分に行えば、特許にならないような出願をしなくなります。

 

特許庁審査官は審査に用いる先行技術調査は外部調査機関へ外注していますが、特許検索にはFターム(エフターム:日本国特許庁が編纂している、日本の特許文献の、それぞれの文献に記載された発明の技術的特徴による分類体系、またその分類体系において用いられる分類記号)を中心にした検索を行っています。したがって、先行技術調査はFタームを入れた検索をするのが望ましいのですが、実際はキーワード検索によるものが多いことが実情です。しかしキーワード検索は漏れが多く、信頼度は低くなります。

 

さらに、特許明細書には先行技術文献を記載することが必要です。2002年の特許法改正により、特許法第36条第4項第2号が新設され、先行技術文献開示制度が導入されました。すなわち、出願に係る発明に関連する発明を知っている場合に、特許出願人はその先行技術文献情報を特許明細書に記載しなければならなくなった、ということです。

 

大企業では特許部門(知的財産部門)があり、社内で提案されてくる特許出願に対しては、先行技術調査を行い選別していますが、そのような部署のない中小企業以下の企業では先行技術調査が弁理士まかせになってしまいます。その場合、弁理士の選び方が重要な要素となるのです。

特許事務所(弁理士)選び方がよくない

弁理士の主収入源は特許出願の代行手数料(約30万円)です。
そのため、先行技術調査を厳しくして出願を諦めさせるよりは、調査を甘くして出願させる方を勧めがちです。しかし先行技術調査を怠れば前述の通り、特許を取り消されるリスクが高くなります。
自社のためには、先行技術調査を多少厳しいくらいしっかりやってくれる弁理士を選ぶのが望ましいのです。より望ましくは、先行技術調査は特許事務所以外で行うべきです。

 

弁理士の中には先行技術調査を特許電子図書館(IPDL)の公報テキスト検索のキーワード検索だけで、簡単に済ませるところが少なからずあります。特許検索はキーワード、Fターム、FI[ファイル・インデックス:日本独自の特許分類で、IPC(国際特許分類)を更に細分化したもの]等を組み合わせて検索するのが重要です。
特に特許庁審査官はFターム主体の検索で得られた資料で審査を行うので、Fタームを使用した調査がより望ましいのですが、特許電子図書館ではキーワードとFタームを組合せた検索ができません。

 

また、弁理士の特許明細書の書き方、専門技術、料金体系等を十分調べないで、特許事務所の所在地、広告等で選んではいけません。特許明細書の書き方、特に特許請求範囲の書き方次第で、特許の権利範囲の強さが変わり、特許の査定率も変わります。
特許出願・登録にかかる相当の費用を、料金体系を十分調べずに依頼すると思わぬ追加費用を請求される事も少なくありません。現在、特許事務所(弁理士)も色々な方法で調べられるようになっています。弁理士の調査も必要な時代なのです。

失敗しないための対策

無料の先行技術調査法

では、先行技術調査をより確実性の高いものにするための対策をご紹介します。無料の先行技術調査法では、特許電子図書館(IPDL)の公報テキスト検索Ultra Patentを併用して調べるがよいでしょう。即ち、IPDLの公報テキスト検索で予備検索を行い、Ultra Patentで本検索することを勧めます。

 

IPDLの公報テキスト検索では、キーワードとFタームの組合せ検索ができないので、IPDLでは主としてキーワードを用いた検索を行い、類似特許を抽出します。抽出した特許のFターム、FIを調べ、本検索はキーワード、Fターム、FIを組合わせた検索をUltra Patent(コマンド検索推奨)で行います。一部Fタームの記載がない特許があります。その場合はUltra Patentで調べて下さい。なお、上記の予備検索はUltra Patentでも可能ですが、特許公報の内容が閲覧できない(有料)ので、予備検索はIPDLの方を推奨します。

具体的な検索方法はつばめリサーチ無料日本特許調査法を参照下さい。
特許公報の取得方法はつばめリサーチ無料特許公報取得法を参照下さい。

特許電子電子図書館(IPDL)の公報テキスト検索とは

特許電子図書館(IPDL)は独立行政法人工業所有権情報・研修館が運営する特許、実用新案、意匠及び商標等の産業財産権関連の無料データベースで、公報テキスト検索は、検索を実施するサイトです。

 

IPDLの利点

  • 直ぐに特許公報の詳細内容が見られる(PDFファイルとして特許公報の取得が可能)。

 

IPDLの欠点

  • 収録期間[公開特許公報:公開日が平成5年1月1日以降]が短い。
    即ち、平成4年12月31日以前公開特許の検索ができない。
  • キーワードとFタームの組合せ検索ができない。
    (ただし、FタームとFIの組合せ検索は「特許分類検索」で可能)
  • 複雑な検索ができない。
  • 一部特許にFターム表示されない。

 

Ultra Patentとは

Wisdomain社提供の特許検索サービス(一部無料)です。ここでは無料部分を利用する。
日本特許(公開、登録)、実用新案、米国特許(公開、登録)、欧州特許、国際出願他が無料検索可能。

日本特許は1964年(昭和39年)から全文キーワード検索が可能で、コマンド検索を用いると、キーワード、Fターム、FI等の組合せた複雑な検索可能。公報番号、発明の名称、書誌事項表示までは無料[特許公報取得、検索結果のExcel出力は有料]です。

 

Ultra Patentの利点

  • 収録期間が長い。1964年(昭和39年)より全文検索可能。
  • 複雑な検索が可能。即ち、キーワード、Fターム、FIの組合せ検索可能。

 

Ultra Patentの欠点

  • 特許公報の閲覧・取得ができない[有料]。
  • 検索結果のExcel出力ができない[有料]。
  • 化学式検索に難がある[Al2O3のような下付文字の検索が不正確]。

特許事務所(弁理士)の選び方

特許明細書の品質を調べる

特許は特許明細書、特に特許請求の範囲の書き方でその良し悪しが分かります。明細書には発明を実施するための詳細な説明を記載され、特許請求の範囲には、取得したい権利範囲を記載します。特許請求の範囲の書き方次第で、強い権利になるか、弱い権利になるかが決まります。一番、弁理士の差が表れるところです。
特許明細書の品質は弁理士が代理人となっている特許公報をみればある程度判断できます。IPDLの公報テキスト検索で、代理人欄に弁理士名を入れて検索できます。
この検索の際、一定期間の出願日[例:2000年1月1日~2005年12月31日、特許査定のタイムラグがあるので、暫く前の期間がよい]に対する公開特許公報件数と特許公報件数を検索すると、その期間に弁理士が取扱った特許出願件数とその中で登録[審査官の特許査定]になった件数が分かります。すなわち、特許査定率の概算が分かるということになります。

 

先行技術調査への対応を調べる

相当な費用のかかる特許出願・登録では、十分な先行技術調査を行い、特許にならないような発明の出願は止める弁理士が重要です。
先行技術調査をほとんどしないか、あるいはIPDLによるキーワード検索程度の簡単な調査で済ませ、すぐに出願に取りかかるような特許事務所(弁理士)は避けるべきです。少なくとも、Fタームを用いた調査を実施している特許事務所を選ばなくてはなりません。

 

専門技術分野の確認

現在、技術分野は非常に多岐にわたり、一人の弁理士が全てに精通するのは事実上不可能です。出願したい発明を、強い権利を持つ特許にするためには、技術分野が合致する弁理士に依頼することが肝要です。IPDL、弁理士ナビ、ホームページ等を併用することで弁理士がどのような技術分野を得意とするのか確認することができます。

 

料金体系の確認

現在では、多くの特許事務所がホームページを開設しています。ホームページで料金体系を事前に確認し、依頼するかを判断しましょう。特に、成功報酬の有無の確認は欠かせません。成功報酬は特許査定時に謝金(約10万円程度)として要求される場合が多くあります。参考資料:弁理士手数料を参照。

特許事務所・弁理士の調べ方

弁理士の調査は下記のIPDL(公報テキスト検索)、弁理士ナビ、所属特許事務所ホームページを併用することで、経歴、専門分野、実績、能力等の概要が分かります。

IPDLの「公報テキスト検索」
  • 弁理士名が分かっている場合
    「公報テキスト検索」の「検索項目選択」で「代理人」を選択し、「検索キーワード欄」に弁理士名入力すると、その弁理士の扱った特許が検索されます。
    (※件数が多い場合は「公報発行日」で期間限定して、1000件以下にすると、表示されます。)
    ここから、取扱件数、専門技術分野、依頼人が分かります。また、出願日の期間を決めて公開特許公報検索と特許公報検索を行うことにより、その期間の出願取扱い件数と特許査定された件数のおおよその割合が分かります。その弁理士が代理人となっている特許明細書を見ることにより、弁理士の能力が分かります。

 

  • 弁理士名がわからない場合
    ある技術に関するキーワード検索により、その技術分野の弁理士が分かります。具体的には、「公報テキスト検索」の「検索項目選択」で「発明の名称を」を選択し、「検索キーワード欄」に技術名を入力して検索(1000件以下にする) → 一覧表示 → 公報番号 → 表示画面で弁理士名を確認。

 

弁理士ナビ

弁理士ナビとは、日本弁理士会が運営する無料の特許事務所、弁理士検索サイトです。弁理士名、特許事務所名から検索が可能。特許事務所所在地、特許事務所規模、弁理士経歴、専門分野等が分かります。
全ての弁理士について検索可能で、マルチ検索を利用すれば、様々な角度から(名前、事務所所在地、専門分野、技術分野、経験年数など)より詳細な検索が可能となり、希望地域の弁理士を絞ることが可能です。実績、能力は上記IPDL(公報テキスト検索)で調べます。

 

ホームページ

現在では、多くの特許事務所がホームページを開設しています。上記「弁理士ナビ」のマルチ検索(事務所)で、ホームページの有無を調べることが可能です。事務所概要や料金体系を調べるにあたってはホームページがよいでしょう。

特許申請のお役に立ちます